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    Tram @ 恵比寿

    • 2016.08.19 Friday
    • 21:13

     

    自分は決してコーヒー通ではないけれど

    所謂コーヒー通にはあまりにも有名だった大坊珈琲店がなくなって

    もう2年になる

     

    穏やかな笑みを湛えたロマンスグレーのマスターが

    カウンターで一杯一杯淹れてくださるネルドリップ

    シルバーのコーヒーポットから一滴一滴と落とされるその様を

    「点滴ドリップ」と称して

    ショーを観ているかのようにじっくり眺めたのが今は懐かしい

     

    全席喫煙の決して広くはない空間は

    タバコですら大の苦手だというのに

    葉巻の人が居たりするとそれはそれはある意味地獄だったけれど

    それでも

    今ここに行かなければいずれ語り草になるような気がして・・

     

    実際にそうなってしまった今

     

    「恵比寿にも大坊がある」と情報をいただいて

    一人恵比寿に向かった

    偵察の時は断然一人で行くに限る

     

     

     

     

     

     

     

    ドリップ最中のマスターは

    声をかけることはもちろん

    近づくことすら躊躇するほどに神々しい

     

    スタンドライトの灯りのもと

    まるで瞑想状態に入っているかのような表情で

    そこだけが切り取られた世界に一人

    黙々とコーヒーと対峙する細く長い時間

     

    凝視しているこちらも

    思わず息を潜めてしまう

     

     

    珈琲を淹れる

     

    という仕草が崇高な芸術域に達していることに

    密かな衝撃を感じた

     

    淹れ終わって近くに来たマスターに

     

    「大坊さんが淹れるお姿を思い出しました」

     

    と伝えると

     

    「ご本人は自分には似ていないと話されてました」

     

     

     

    やはり!

    ”かの大坊氏”のことはよくご存じだった

     

    それからマスターとしばらくコーヒー談義になり

    帰り際には畏れ多くも

     

    「次回いらした時にはお好みの濃さを指定してくださいね」

    と微笑まれた

     

    ドリップしている時の近寄り難さはどこへやら

    口数が少なく独特な間を取りながらの語り口は

    意外なほどに?温かかった

     

     

     

     

    大坊珈琲と同じく全席喫煙というハードルの高さにもめげず

    煙を避けて入口近くのカウンターの端に座ってでも

    また足を運びたい恵比寿のTram

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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